大判例

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水戸地方裁判所 昭和25年(行モ)1号 決定

原告 奧谷信雄 外十七名

被告 茨城県知事

一、主  文

申請人等の申請を却下する。

二、理  由

申請人等代理人等の本件申請の理由は別紙第一、第二目録記載の土地はそれぞれ同目録下欄記載の各申請人等の所有山林なるところ茨城縣農地委員会は昭和二十三年四月二十九日未墾地買收計画を樹てたので申請人等はこれに対し順次適法に異議及び訴願の申立をしたが何れも棄却せられ昭和二十四年一月十九日当廳に対し右買收計画による同年七月二日附買收処分ならびにこれが買收令書の取消を求める訴(当廳昭和二十四年(行)第四号)を提起し現に係爭中である。然るに被申請人は昭和二十五年二月二十七日右係爭山林を上野合村開拓民二十数名をして被申請人の部下なる茨城縣開拓課長が指導の下に右買收地のうちの第一目録記載の山林内に立ち入り地上に生立せる三年生の椢その他雜木の伐採と椢の根株の掘鑿に着手せしめて斜傾地を残し殆ど全部の立木を伐採した。しかしながら申請人等は当該山林の保存を目的としてこれが買收を爭うもの故、いま該地上の立木や根株を伐採し掘鑿せられんか原状回復は不能となり、たとえ本案訴訟において勝訴の結果をうるも償うことの出來ない損害を被ること明白であり、これを避けるため緊急の必要があるから前記本案事件の判決あるまで右買收処分の執行に属する一切の行爲の停止を求めるため行政事件訴訟特例法第十條に基き本申請に及ぶというに在る。

案ずるに別紙第一、第二目録記載の山林は椢山にして昭和二十二年中に一旦立木を伐採したが残存の根株より発した新芽は現に直径五分より一寸位の立木に成育しているところ被申請人は申請人等主張の如き未墾地買收の決定をなした上、上野合村生井沢帰農組合員植田安次外二十数名に対し自作農創設特別措置法第四十一條の二の規定に基き同人等に対し本件未墾地の仮配分をなし開墾に着手することを許可したため同人等は昭和二十五年三月二十七日頃第一目録記載の地上の立木を伐採し、且つ椢の根株の掘鑿に着手したことは本件疏明方法によつて明かである。思うに買收農地上に前記の如き椢の根株の残存する場合、その処分の執行によつて根株が掘鑿の危機に瀕すれば、このため所有者は時に意外の損害を被ることもあるであろう。しかしながらさればといつてこの損害は結局金銭を以て補填する可能性があるものと考えられるから從つて他にこれがため水源に枯渇する等処分の執行を停止すべき緊急の事由あることのみるべき疏明なき本件においては、右の処分は未だ行政事件訴訟特例法第十條に所謂処分の執行に因り生ずべき償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があるものとしてその執行を停止すべき場合には当らないものといわねばならぬ。仍て申請人等の本件請求は理由なきものとして却下し主文の通り決定する。

(裁判官 川村義比古 池羽正明 園田治)

(目録省略)

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